冷徹と優柔の、相反した相乗効果。
もう2度と、あんな酷い夢はごめんなのに。

―――気づいてほしい、気づかないでほしい?



02:DISTURBANCE AND INDICATION



あの最低な中庭での出来事があった日の翌々日、今までになかった噂が立った。
―――――「忍足 侑士に、彼女が出来た」。

 くだらなくて笑えた。呆れて物も言えなかった。あたしが侑士と付き合うことになったとき、こんな噂は立たなかった。つまり今回の噂は、あいつ自身も認めているということ。目の前が真っ暗になった。あたしとあいつのことを知ってる友達が何かを言ってくれてる、のはわかった。

 だけどそんな励ましの言葉は、あたしの意識には届かなかった。
 そしてあたしはその日、学校を早退した。





「俺に『彼女が出来た』?」
「ああ」
「『出来た』言われても、そんなもん前からおるんやけど」

 休み時間、岳人と宍戸が教室にやって来て告げられた内容に、我ながら驚いた。いつの間にとのことが知れたんやろうって。ていうかこいつらも知っとるはずや。

「……どういうことなんだよ、忍足」
「どういうことやって言ったって、『彼女』ってのはやで?」
「あぁ?」
「ちょ、つっかかんなって宍戸!」

岳人が必死に宍戸を止める。そして詳しいことを話し出した。

「なぁ侑士、お前に出来た彼女っつーのは、1個下って噂だぜ?……じゃ、ねーだろ」
「1個下?」

ふと気づく。ああ、『あの』女か、と。
おとつい、が中庭を通るときに見せつけるためだけに利用した、『あの』。

「正直幻滅だぜ、侑士。お前はあーいうことしながらも、のこと好きでいるって思ってたのによ」

岳人の声は鋭くて、冷たかった。岳人がここまで怒るのも珍しいな、と他人事のように思う。

「岳人、今教室におる?」
「……早退した」
「……は?」

 信じられない返答に耳を疑う。……が、学校を、早退した?あの「皆勤賞狙ってるんだー」とかって笑いながら、風邪をひいても毎日登校して、絶対に早退なんかせんあのが?

が……早退?」
「ああ」
「あいつ……」

俺は何故か嫌なもんを感じた。
まさか―――――例の噂がの耳に、入った?

「……俺、帰るわ」
「え、ちょ、侑士カバンは?おい侑士!」

 岳人の言葉は無視して走り出す。視界の隅に怒ったような顔をした宍戸も見えたけど、それも無視。走っとったら向こうから跡部が歩いて来よったから、すれ違い様に「体調悪いから帰るわ!」と叫んだ。背中に「どこが悪いのか言ってみろ!」と声が掛かったのもやはり無視。そこら中の奴等の視線も無視。

 階段を全速力で駆け降りる。あと少しで昇降口、ってとこでまた声が掛かった。

「侑士先輩!」

 苗字ではなく名前を呼ばれたことに思わず振り返る。呼んだ人間の顔を見たら何とも言えん怒りが込み上げてきた。無言で壁際に追い詰めて、どん、と相手の肩を押す。おととい中庭で相手したった1個下の女。たぶん噂流したんも、こいつ。

「え、あの、侑士先輩?こんなところじゃ……」

 勘違いまみれの雌豚女め。思わず嘲笑する。
 押した肩に手を当てて力を入れると、女の表情が一瞬にして恐怖に変わった。

「ええか」、なるべく低く、鈍く言う。「俺のこと名前で呼んでええ女はな、準だけなんや」

“誰それ?”と一瞬怪訝そうな顔をして、そいつははっとひらめいたように言った。

「この間の、中庭の……!?」
「そうや。あいつが俺のほんまの『彼女』。ほなな」

 また3年の靴箱の方に向かって走り出す。後ろの方で、「何で彼女の前であんなことするんですかー?」と非難に似た声音で言っているのが聞こえた。

 ―――――アホ、お前になんか教えるか。
 そんなもん、あいつがいつか気づけば、それでええんや。



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あとがき(※前回に引き続き空気ブチ壊し注意)
途中のべ様とすれ違うくだりがお気に入りでつ(^0^)/
いきなり走り出して「ちょ、かばんは!?」っていうツッコミが入るって
自分の中では青春ドラマの王道シーンなんですけど、
本当そういう爽やかさが似合わないよね忍足先輩。←

テンポ良く更新して行きたいぞー