「きっと今のわたしたちの関係は、奇跡に近いことなんだ」。
「わたしだけが一方的な恋をしている、わけじゃない、はず」。

思い込みは大切、何故ならとても楽になれるから。
思い込みは最悪、何故ならそのあとには、言葉に出来ないおおきな、おおきな絶望がやって来るから。

ああ、ほら、こうやって。あたしの恋人は今日も、意地悪そうに嗤うんだ。




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「……何やってんの、侑士」
「ああ、。おはようさん」
「何やってんのって聞いてるんだけど」

わたしがそう言うと、侑士は乾いた声で笑った。

「何って……いちゃこいてんのやろ。見てわからんか?」

 侑士に肩を抱かれてる女の子もくすくすと笑う。ちょっと幼い面影のあるかわいらしい顔。たぶん1個下、くらい?中3のくせに、本当節操の無い奴。
 彼にはやっかいなところがある。それは見ての通り女癖が悪いところ。今日は朝中庭を通ったらいきなりこの不快な場面を見せられた。笑っちゃうな。―――わたしというものがありながら。とか言ってみたりして。今更。

 侑士のことを好きな子は不特定多数いて、侑士はその子達をまんべんなく構う。わたしの立場なんて関係無い。よってわたしは上辺だけの彼女なのかなと思うときがある。だってわたしが侑士の彼女ってことを知っているのは、ごく少数だけ。わたしが傷つくその度に、侑士は絶妙なタイミングで現れて、優しさを露見する。やってらんないって思うんだけど、結局わたしはこいつが好きだ。目の前で『一度きり』の女の子と唇を交わし続ける彼氏を見るのは、もう、慣れた。例え不特定多数の女に成り下がろうとも、わたしはたぶんこいつを忘れられないと思うんだ。それって何かに似てると思う。でも何だろう、わからない。

「んなじっと見んな。気ぃ散るやろ?」
「や、見てるのわたしだけじゃないし。通行人みんなが気にしてますけど」

 ふと我に返って言い返した。わたしが言う通り、先程からここを通る生徒たちはみんな見てみぬ振りをしたり、友達とこそこそ言ったりしてる。「忍足君って、一体誰が彼女なんだろうね?」、こんな具合に。
 キスを交わし続ける一組の男女と、その前に突っ立ってる一人の女生徒。つまりわたし。こんな馬鹿で情けない光景は、至る所で目撃されているはずだ。



「おう、遅かったな。珍しいじゃねぇか」
「あー……おはよ、宍戸」
ー、俺らといっしょにトランプしねぇ?今から神経衰弱すんだけど」
「向日、わたし今疲れてんだよね。見て判るでしょ?」

乱暴に机に鞄を置くと、おい、どうかしたのか?、って宍戸が困ったように言った。

 視界の端にしゅんとする向日が入る。完全に八つ当たりだな、これ。自分が嫌になる。宍戸の優しさは時々心に痛くて、「何でもない」と苦笑いするのが精一杯。
正直朝からああいう場面を見せられるのは辛い。慣れたとはいえあくまでも好きな人だし、彼氏、だし。放課後に見せられたんなら即行家に帰って部屋に閉じこもるだけでいい。だけど朝から見せられたんじゃ、一日その場面ばかり思い出してテンションは下がりっ放し。

 視界の隅で宍戸がこそこそと向日に何か言うのが見えて、向日はぱっとわたしに向き直ると、「なぁ、やっぱトランプしようぜ。お前の好きなババ抜き!」と弾むように言った。思わず苦笑して、うん、と頷いた。どういうわけかわたしの周りの人間はみんな、優しいひとばかり。実際わたしは彼らに、とても救われている。





 俺は別にあいつを傷つけようとしてやっとるんやない。ただ違う女といちゃついとるところを見して、散々惨めな気持ちにさせたあとに、ひたすら優しくしたってあいつが離れてかんようにしとるだけ。

―――あいつは知らん。俺がどんだけあいつに執着しとるかを。
―――あいつは知らん。俺がどんだけ、あいつが好きかってことを。

 自分でも、もうこうなったら中毒みたいなもんやと思う。だからただ俺を好きにさせるだけやなくて、俺があいつに執着しとるみたいに、あいつも俺に執着せなあかん。だから苛めて、嗤って、愛したる。早よ俺に依存したらいい。俺がおらな生きてかれへんって言えばいい。俺が好きで好きでしょうがないって、 そう言えば。
そしたらもっともっと苛めて、もっともっと求めて、―――――もっともっと、愛したるから。



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あとがき(※空気ブチ壊し注意)
まず忍足てんぱいの独白ナニkore←
読み返して「何って……いちゃこいてんのやろ」に噴いた自分って←
すみません。
どうなるんだろうこれから……。いや、がむばろう。

こんな感じで始まった連載ですがいかがでしたでしょうか。
よろしければ今後もお付き合いください。